夫を浮気相手に奪われた妻の手記➁

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そこには、夫との離婚を要求する脅迫文じみた文字が躍っていました。

夫はその人と、すでに半年以上も浮気を続けていて、互いに愛し合っていて、夫は私と別れてその人と一緒になる約束をしているというのです。
イラスト
私は、頭の中が真っ白になりました。

しばらくは思考が停止して、なにも考えられませんでした。

やがて、真っ先に考えたことは、「これはきっとイタズラだ」でした。

悪意のあるイタズラに違いない。

きっと、新手の迷惑メールか何かで、ありもしないことを書いたメールをでたらめなアドレスで送りつけて、人のあわてる顔を想像して楽しむ人たちの仕業だろう。

そう思いました。

それを確認するため、わたしは落ち着いて、もういちどメールを読み返しました。

きっと、どこのだれに送っても不自然じゃないような、あいまいな記述で終始しているに違いない。

でも、私のその思いは、繰り返して読むうちに、消えていかざるを得ませんでした。

そのメールは、確かに夫のことを言っているのです。

夫の背中のホクロのことまで書かれていました。

こんなこと、普通の人が知っているはずがありません。

私の気分は、これまで味わったことがないほどに、暗く沈んでしまいました。

ですが、何とかして自分に「これはイタズラなんだ」と言い聞かせようとしました。

夫が昔付き合っていた恋人が、よりをもどしたくて、どこかで私のアドレスをつきとめて、
こんなメールを送っているのかもしれない。

陰湿な嫌がらせをする人は、何年も前のことを根に持って、しつこく復讐するということを聞いたことがあります。

私は、こういう人は、へたに怯えたり騒いだりするのは逆効果だと思いました。

放っておこう。(続きはこちら)