浮気相手に夫を奪われた妻の手記⑩

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その言葉は、もうわたしの心の中には届いていませんでした。

その夜私は、部屋の真ん中にうずくまるようにして、震えながら朝を迎えました。

明けてくる朝の光をぼんやりと眺めながら、私は、夫の別れると言う言葉を信じるしかない…それしかないと思いました。

私はまだ、絶望を受け入れられる心の余裕がなかったのです。

夫がいった、「別れるから」という言葉を、もう一度だけ信じよう。

たとえ今日からでなくてもいい。どれだけ時間がかかってもいい。

少しずつ明ける朝のように、わたしの幸せの日々は、きっとまた帰ってくる。

そう信じないではいられませんでした。

だって、幸せだった時間は確かに存在していたんです。

今はちょっと、そのレールを外れただけ。

少しだけ我慢したら、また必ずその幸せは戻ってくる。

私はそのかすかな希望にすがりつきました。

ですが、浮気を認めてからの夫の行動は、反省ではなく開き直りでした。

背広に女性物の香水の香りをつけて帰宅し、朝帰り、無断外泊…。

そのうち、家にお金を入れることさえ、ほとんどなくなりました。

その時の私は知らなかったのですが、浮気相手と部屋を借り、そこで生活をはじめていたらしいのです。

それでも私は、なにも言わずじっと我慢しつづけました。

情けないことに私は、一度幸せな時間を築いていた事実にすがりつくあまり、離婚を言い出されるのが怖かったのです。

きっと戻ってきてくれる。

浮気相手とはきっちり別れて、ここに戻ってきてくれる。

わたしは自分自身に言い聞かせ続けていました。

でも。

そんな思いは通用しませんでした。

あの電話がまた始まったのです。(続きはこちら)