私はいまでこそ、牧口メンタルコンサルティングの活動をとおして、たくさんの方のサポートをさせていただいておりますが、実は自分自身、過去にある女性と親密になり、身体の関係はなかったものの、妻にずいぶんと辛い思いをさせてしまった経験があります。
そのことは、本当はあまり言いたくはないのですが、自分の経験があったからこそ、この活動をさせていただいていることも事実ですし、ご相談者様の悩みや苦しみを真正面から受け止めるためには、まず、自らが打ち明けていくことが大事だと思うので、この場を借りてお話します。
あれは2003年の夏のことでした。
当時私は、知人と小さな会社を運営していました。
相手の女性はそのときのスタッフでした。
彼女は同じフロアにいたわけではないですし、普段は顔を合わせることはなかったのですが、ある時、たまたま彼女からの電話を受けた私は、その後のやりとりを通して、いつしか特別な感情を抱くようになってしまったのです。
はじめは、自分の感情に戸惑いました。
なぜかわからないけど、彼女のことが気になってしかたないし、自分の中でどんどん存在が大きくなっていくことを抑えられませんでした。
決して妻に対して愛情がなかったわけではありませんでしたし、夫婦関係が冷め切っていたわけでもありません。
自分でもわからないうちに、「気づいていたら、こうなっていた」という感じでした。
ただ、自分のしていることが妻に言えないことだという自覚はありました。
ありましたが・・・・・
その時はまだ、自分のしていることが妻への裏切りだとは考えられず(というか、認めることができず)、衝動的な欲に駆られてしまい、その人のことが頭を離れませんでした。
まして、それを客観的に受け止めて、やめなければいけない、と考えるところまでには、思考が及ばなかったのです。
そして、「自分はどちらとも別れたくないし、このままうまくいけば、妻と相手女性の両方を大切にしていけるかも」という、とんでもない思い違い、錯覚をしてしまっていました。
本当に愚かな考えでした。
そしてもちろん、こんなことが長く続けられるはずはありません。
やがて、妻は私の浮気に気づきました。
これはあとから知らされたことですが、当時の私の言動はそれまでと一変していて、妻が聞いてもないことをくどくど説明しようとしたり、感情も不安定で会話もちぐはぐだったそうです。
私自身は、当時は全然気づかずにいたことですが……
また、妻は私の行動に浮気の兆候があらわれてきたことを直感的に見抜き、細かく調べていました。
たとえば、携帯の通話料金の明細をみて、電話をしている番号や、電話をかけている時間帯を調べ、 それがいつも決まった番号で、決まった時間帯にかけていることをつきとめていましたし、その番号に「抜き打ちアンケート」を装い直接電話をかけて、相手の細かな情報も具体的に手にいれていました。まったく、妻の調査能力には脱帽します((+_+))
ある日の夜、私は相手の女性とノートパソコンをつかって、メールのやり取りをしていました。
まるでチャットのように、彼女から来たメールにすぐに返事を書き、そのメールにまた彼女から返事がくる、といった感じで、1時間以上もやっていたと思います。
そんな私を、妻は部屋の向かい側からじーっと見つめていました。
それでも私は、『妻はどうせ気づいていない。仕事のメールだと思っているだろう』とタカをくくっていました。
やがて妻は、耐えかねたように「私、もう限界だわ」といいました。
私は何のことかわからず、「え?何が?どうしたの?」と聞くと、
「○○さん(彼女のフルネーム)という人のこと、心当たりがあるでしょう?」
まさか妻の口から彼女のフルネームが出るなんて、想像すらしていませんでした。
妻は「これ以上、耐えられないの。浮気をしているなら正直に本当のことを言ってほしい」と言いました。
私ははじめ、それを否定しました。「浮気なんかするわけないだろう」と。
本当のことなんか、言えるわけないですから。
でも、そんなウソで騙しとおせるはずがないんです。
それは自分自身、よくわかっていました。
妻はどうして自分がそう思ったのか、疑うに足りる十分な根拠を私に示して、説明を求めました。
私はほとんど何もいえないまま観念して、浮気を認めました。
つづけて彼女は言いました。
「その人といますぐ別れて。もう二度と会わないで」
(妻はそのときに「悪かった。彼女とは別れるから」と私がすぐに女性と別れることを約束してくれるものと思っていたそうです)
ところが。
「・・・・・・・・・・・・ごめん。今すぐその返事はできない」
気がつくと、私はそう答えていました。
正直なところ、あまりの突然の展開に、呆然としてしまって何も考えられなかったうえに、相手女性に対する思いが、そのときはまだ心の中に残っていたからです。
私のその言葉に、妻はみるみるうちに表情を硬直させ、青ざめていきました。
そして、全てを失ったように座り込み、「死にたい、死にたい」とつぶやいていました。
彼女は絶望の中で、小さく震えていました。
とても見ていられない姿でした。
私は思わず妻の肩を抱きかかえようとしました。
そのとたん、妻は『触らないで!』と絞り出すように言いました。
そのとき、はっと気がつきました。
今の私には、そんなことさえ、する資格がないのだと。
そして、すぐそばにいるのに、遠くでひとりぼっちで震えている姿を目の当たりにした私は、自分がどれだけ悲しませる行為をしていたか、どれだけ愚かだったのかということを思い知り、ようやく、自分の想像以上に妻が苦しんでいるということに気が付いたのです。
これを読まれた方は、『この人、最低だ』と思われるでしょう。
私自身、そう思います。
深夜になり、私と妻は、無言でそれぞれの布団に入りました。
私はとても眠ることはできず、布団の中で、ずっと考え続けました。
でも正直、思考が停まっていて、この現実を理解することもおぼつかない状態でした。
何時間か過ぎて明け方になり、少しずつ外が明るくなっていくなかで、前日の震えながら泣いている妻の顔を思い出し、『自分にとって本当に大切なものは何なのか』が鮮明になっていくのを感じました。
朝になって、私は浮気相手との決別を固く決意し、妻に『女性とは別れてくるからね』と言いました。
『信じていいの?』と彼女は問いかえし、私は今度こそ、妻にしっかりと誓いました。
でも、あたりまえですが、私の言葉を妻がすぐに信じることなどできなかったと思います。
私は相手女性と完全な決別をして、二度と連絡をとることはしませんでしたが、妻との信頼関係はゼロどころか、マイナス1200%くらいからの再出発となりました。
私たちの夫婦関係は、私の浮気という行為によって、完全に破壊されてしまっていたのです。
当然ですが、妻にはフラッシュバックがありましたし、はじめは私が何を言っても、笑顔を見せてはくれませんでした。
・・・・というか、笑顔どころか、表情がありませんでした。
裏切られたという思いと、心のショックがそうさせていたんだと思います。
家事はきちんとやってくれました。食事もつくってくれました。
でも、会話のときも、感情をまったく含まない妻の口調・・・・
私が何を言っても、何を約束しても、妻の心には届きませんでした。
真面目な話、妻が再び自分を信じてくれる日が本当にくるんだろうか、とさえ思いました。
でも、それでも私はそれだけの心の傷を妻に負わせてしまったのだから、何年かかってでも、妻に償おうと思っていました。
それまでやっていた会社は解散になりました。
私は男性ばかりの深夜の仕事のアルバイトを見つけ、できるだけ妻が不安にならないように、考えられることはすべてやりました。
携帯電話はロックを解除して、常に妻の見えるところに置く。
仕事以外でのひとりでの外出も極力避けました。
妻に対して、ウソをつかないこと、隠し事をしないこと、妻に言えないようなことはやらないと決め、妻の気持ちに少しでも寄り添っていきたいと思いました。
そうやって、1年ほど経ったころには、本当に少しずつ、まるで氷が解けていくように、妻は感情を示してくれるようになっていきました。
少しずつ、笑顔を見せてくれるようになっていきました。
それがどれだけ嬉しかったか。
それがどれだけ大切なものであるか。
私は今でも、そのときの思いを忘れることはできません・・・
それから、すこしずつ妻との関係が回復されていき、再び私のことを信じてくれるようになっていくと、今までとは違う、不思議なことが起こっていることに気がつきました。
それは、いままで以上に妻に対する思いがより深まり、愛情が増し、浮気をする前よりももっと、二人の絆が強くなったと感じていることです。
そして、それは妻も同じように感じているというのです。
実は、ご相談いただいている方の多くが、同じ気持ちをおっしゃっています。
いうまでもなく、浮気そのものは苦しく、悲しく、辛い経験なのですが、以前の関係を取り戻そうとして互いが努力をすることで、結果的に、逆に夫婦愛が深めていくことができます。
私は、これこそが本当の意味での『解決』だと考えています。