私がもっとしっかりしていたら……?

しっかり者の妻と精神未成熟の夫

私のもとにお電話をくださる方は、夫の浮気を深刻に悩み、解決方法を探し、具体的なアドバイスを求めておられます。

そして、「しっかり者」で「頑張り屋さん」の女性が多いように思います。

先日ご相談をいただいたA子さんも、主婦として家庭を守りながら、ご主人の仕事を手伝い、ご自身も週に3日ほどパートに出て頑張っておられました。

A子さんのご主人は、普段から『俺はとにかく自分のやりたいことをやりたい。ルールやモラルに縛られることなく、自由に心の赴くままに生きていきたい』と主張する、いわばアウトローを地でいくタイプ。

知り合ったころから、常識とか慣例に合わせるというよりも、自分が良いと思えばやる、ルールは二の次、という一面があったようです。

でも、A子さんはそういうご主人の奔放さに、逆に自分にはない魅力を感じていて、ご主人からの猛アタックもあって20年前にご結婚されました。

以来、ご主人のやることには何も反対せず、「あなたの好きにしていいわよ」と自由を許してきたそうです。

1年前、ご主人の浮気が発覚したとき、A子さんはご主人を責めるのではなく、「もっと夫婦のこと、私のことを考えてほしい」と初めて自分の気持ちを伝えました。

ところがご主人は、『自分のために生きることで精いっぱいだ。ほかの人を好きになるのも俺の勝手だ。君のことまで考える余裕はないよ』と容赦のない一言を返してきました。

A子さんは何もいえず、黙るしかなかったそうです。

私は正直、ご主人の倫理観や思考の基準に未成熟さを強く感じました。

ご主人はもう46歳。結婚して20年以上たっているのに、独身のときから考え方が全く変わっていないのです。

 

自由を主張する夫に「甘やかし」を続けた結果、、、

これは、もちろんご主人の意識自体に問題があるのですが、そうなってしまった背景として、なんでも容認してきたA子さんにも、その一因があると言わざるを得ません。

自由を求める思いがエスカレートしていくと、結婚生活に束縛感や不自由さばかりを感じて、それが不満や現実逃避につながっていくこともあります。

それを甘んじて許せば、その男性の精神はいつまでも未成熟のまま、自分の欲望や欲求だけを主張するようになってしまいます。

もちろん、あえて対立する必要はないですが、正常な夫婦関係を維持するためには、夫の行動に自制を求めたり、時には反対の意思を示すことも必要なことだと私は思っています。

よく夫は車のアクセル、妻はブレーキにたとえられます。

夫がアクセルを踏みすぎて暴走したとき、妻はブレーキをかけてそれを止めなくてはいけません。

そうしなければ、必ず事故が起きてしまいます。

 

自由の名のもとのモラル崩壊

A子さんは「私がもっとしっかりしていたら、、、、」と深く後悔されていました。

でも、A子さんは決して「しっかりしていなかった」わけではないのです。

むしろ、精いっぱいにできる限りのことをして、家庭を守ってこられました。

ただ、ルール無用のご主人に、好き勝手をさせてしまったことが、モラル崩壊とご主人の甘えを助長する結果となってしまったことは否めません。

それでなくても、ルールのない自由はありません。そして、自由には必ず、義務と責任が伴います。

A子さんのご主人に、その部分が欠落してしまっていることは、否定のしようがないのです。

浮気という、妻にとってもっとも大きな裏切りで残酷な行為すらも、夫にとっては「心の赴くまま」の自由のひとつにすぎなかったということ。

それはとてもショックで悲しい現実です。

 

価値観や倫理観をどう改めていくか

このようなケースでは、夫側の価値観や倫理観をどう変えていくか、その提案を夫が受け入れることができるかどうかが、今後を左右する大きなポイントになります。

ちなみにA子さんの事例では、ご主人は自由でいたいけれども離婚はしたくない、というスタンスでした。

そのため私は、このままでは夫婦関係は壊滅的に壊れてしまうことや、浮気によっておこる弊害はご主人の想像以上に及ぶことなど、ご主人側の目線でお話させていただき、合計8回のメンタルコンサルティングを実施させていただきました。

またご夫婦でも3回のセッションを行い、いろいろあって4か月ほどかかりましたが、結果としてはご主人が意識を大きく変えてくださり、自ら浮気相手との関係も清算されました。

現在は以前の姿が想像できないくらい、A子さんへの歩み寄りを見せ、協力的なご主人に変わってくれています。