壮絶すぎる夫のモラハラからの脱出

ご相談を伺っていて、あまりのモラハラのひどさに本気で離婚をおすすめしたケースもあります。

S美さん。結婚3年目の32歳。

ご主人は少し年上の40歳。

建設関係の自営業をされていて、S美さんは事務員として仕事を手伝っています。

ご主人は何かというとS美さんに対して信じられないような暴言を吐きます。

仕事をしていて、少しでも手際がわるいと、「これくらいできないのか、ほんとにクズだな」とか「もう死んでくれよ。生きてる意味ないから」とか。

事務所には、ほかにも従業員の人たちがいるんですが、その人のたちの前でも容赦なく暴言を吐く。

あまりの屈辱感から、「もう少し言い方を考えてくれない?」とやんわりと反論すると、「うるせぇ、おまえに人権はねぇんだよ!」とさらに怒鳴りつけられる。

気性が荒いタイプだとしても、これは度が過ぎます。

さらに、仕事がおわって帰宅すると、夫は酒を飲みながら、S美さんを見下す言葉を延々と言い続けます。

「事務もできねぇバカが俺に指図するな」とか、夕食の支度が遅くなるだけでも「仕事ができないんだから、飯
ぐらい時間通りに出せよ!」と怒鳴られたり、、、、

S美さんの心情は察するに余りありますが、とりわけ「死んでしまえ」とか「生きてる価値がない」といった類のものは、モラハラのなかでもほんとうに「凶器」に値するものだと感じています。

私は、ご相談いただく中で、ご主人のモラハラに改善の見込みがないことと、ご主人の声がするだけでも過呼吸になるなど、S美さんの心身に深刻な影響が出ているため、S美さんの精神が壊れてしまう前に、ご主人から離れるべきと判断し、現状をしっかり理解していただくと共に、次のようなご提案をさせていただきました。

まず、ご主人のモラハラの証拠とするため、音声データの録音と、日付や発言内容、その時の状況などの詳細を記した日記を作ること。こうした記録があることで、離婚理由を主張したり、慰謝料請求する際に、とても大事な材料になります。

それから、ご主人の仕事を手伝うことに「見切りをつける」こと。そして、将来を見据えて、短時間のパートでもよいので、ご自分の仕事を見つけて、環境を変えること。

はじめは自信を無くして、マイナス思考に陥りがちかなS美さんでしたが、ご相談いただく中で徐々に気持ちを前向きに持たれるようになり、ひとつずつ行動を起こしていかれました。

モラハラの証拠は短期間のうちに、十分すぎるくらいに確保できました。

ご主人の会社の事務はいきなりやめることは難しかったのですが、なるべく必要最小限にして、代わりにパートの仕事を始め、可能な限りそちらに時間を割くようにしました。

そのときにも、ご主人のモラハラ発言はかなりひどかったそうですが、「もうあなたの言いなりにはなりません」とはっきり言われたそうで、「そのときの主人の驚いた顔が忘れられません」とおっしゃっていました。

それから半年くらいして、ご主人から精神的苦痛を受けたということで慰謝料請求を行い別居に移りました。

ご主人はプライドが高く、体裁を気にして裁判になるのを恐れたのか、意外にはやく決着したそうです。

その後、財産分与についてもしっかり求めたうえで、1年後に離婚されました。

パートから始めた仕事も今では正社員登用となり、新たなご自分の人生をスタートされています。

「あのとき、思い切って行動を起こして、ほんとによかったです」

モラハラに苦しむ日々と決別し、勇気ある決意と行動によって、未来を変えることができた事例のひとつとして、ご紹介させていただきました。