そこには、夫との離婚を要求する脅迫文じみた文字が躍っていました。
夫はその人と、すでに半年以上も浮気を続けていて、互いに愛し合っていて、夫は私と別れてその人と一緒になる約束をしているというのです。
私は、頭の中が真っ白になりました。
しばらくは思考が停止して、なにも考えられませんでした。
やがて、真っ先に考えたことは、「これはきっとイタズラだ」でした。
悪意のあるイタズラに違いない。
きっと、新手の迷惑メールか何かで、ありもしないことを書いたメールをでたらめなアドレスで送りつけて、人のあわてる顔を想像して楽しむ人たちの仕業だろう。
そう思いました。
それを確認するため、わたしは落ち着いて、もういちどメールを読み返しました。
きっと、どこのだれに送っても不自然じゃないような、あいまいな記述で終始しているに違いない。
でも、私のその思いは、繰り返して読むうちに、消えていかざるを得ませんでした。
そのメールは、確かに夫のことを言っているのです。
夫の背中のホクロのことまで書かれていました。
こんなこと、普通の人が知っているはずがありません。
私の気分は、これまで味わったことがないほどに、暗く沈んでしまいました。
ですが、何とかして自分に「これはイタズラなんだ」と言い聞かせようとしました。
夫が昔付き合っていた恋人が、よりをもどしたくて、どこかで私のアドレスをつきとめて、
こんなメールを送っているのかもしれない。
陰湿な嫌がらせをする人は、何年も前のことを根に持って、しつこく復讐するということを聞いたことがあります。
私は、こういう人は、へたに怯えたり騒いだりするのは逆効果だと思いました。
放っておこう。(続きはこちら)